ドイツの自給自足農家【ファームステイ@ドイツ2】

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今回の農場は南ドイツのネルトリンゲンからバスで一時間ほどのところにある。食べ物から燃料に至るまで、ほぼ自給自足を達成している。

キッチンもお風呂も燃料は薪。
農場を耕したり、重たいものを運ぶのは馬の仕事。
野菜、小麦、ジャムは自家製。

理想の暮らし!に見えるが、様々な問題も抱えていた。私が訪れた時は、本当に精神的にしんどい時期で、少しでも助けになれば、と文句も言わずに54連勤したけれど・・・。ほんとにしんどそうだった。こんなに不幸って重なるものか?!というくらい・・・。

馬
農場の馬たち
農場の馬
左がお母さん、右が息子!
農場の馬
神経質な問題の馬

まず、ちょうどメインで20年近く農場主の相棒だった馬が二か月ほど前に死んでしまった。1トンほどある、おとなしい馬で、その馬を中心に農場のすべてが回っていたらしい。

その柱が折れてしまって、代わりが見つからない。馬がいないと畑を耕すことも木材を運んでくることもままならない。
農場主が「すべての元凶だ」という一時期農場に滞在していた”イカれた”(農場主曰く、です)おじさんが一緒に農場に連れてきた800kgほどの馬は、今までそのイカれたおじさんに怒鳴り散らされ、たたき倒されて性格がひん曲がってしまったのか、他の馬を小屋内で追いかけまわしてストレスを与え、生まれた子羊は踏み殺す。生まれつきかどうかはわからないが、後ろ足が内側に曲がっている。あと、胴が長く、筋肉が薄い、とのこと。力仕事には適さない体形らしい。

さらに間の悪いことに農場主は大腿骨を骨折。私が来る数週間前に直ったところだという。
骨折した時点で奥さんに馬の餌やりをチェンジしたそうだが、上記のストレスに加え、餌の配分が変わった結果アイスランドポニーが太りすぎてしまい、蹄の病気が出る。動けなくなってしまった。このポニーは農場2番目の働き手だ。

農場のツートップが動けない。後は子供の背丈ほどの小さな馬と乗馬用で仕事には使ったことのないクウォーターホースともに28歳ほど。無理をさせられる年齢ではない。

新しい馬を飼うにも理想とお金の問題が邪魔をする。

北ドイツになら、すでに調教の入った労働に適した馬がいるらしい。値段も手が届く範囲。
ところが農場主にはガソリン(を含む燃料油)を使いたくないという理想がある。
油田の採掘は問題だらけだからだ。環境はもちろん、ランドグラビングと言って、企業が土地を買い占めることによって地元の人々が住む場所を奪われる問題、低賃金の問題などなどなどなど(丸一日語り続けてまだ足りないくらい語ってもらった)、油を使うことによって、それらすべてを肯定してしまうことになる。だから馬もできるだけ輸送コストのかからない距離の近いところから購入したい、ということだった。

もう一つの問題は馬の価格だ。
この農場、何も物を売ったりしていない。聞きにくい話だけれど、仲良くなったので気になって聞いてみると、国から支給される子育て資金で生活しているとのこと。ドイツでは子供が生まれると、3歳まで毎月10ユーロほど支給されるらしい。そういうところはさすがヨーロッパ!
とはいえ4人子供がいる家族の収入源はその子育て資金だけで、それも今年まで、とのことだった。なかなか厳しい。無駄遣いはできない。

馬一頭飼うにもこれだけ問題が山積している。

「非常事態なんだから、いったん世の中の問題は置いておいて、農場の問題を解決したほうがいいよ、調教の入った馬を北から飼うのがいいと思う。」
という私の控えめな意見は聞き入れられず、最終的には私が農場を離れる2週間ほど前に近場で2歳の若い馬を飼うことに決まった。
おとなしい、かわいい馬だけれど、まだ仕事はしたことがないので当然うまくいかなくて、その時点で農場主が調べたところ、前の馬はちゃんと働けるようになるまで2年半かかったという。だめじゃん!!という思いを込めて、Oh・・・とつぶやくしか私にできることはなかった。

農場の経営とは別に、大問題があった。

それは子供たちの盗み癖だ。ボランティアには一部屋与えられるのだけれど、そこに勝手に入って荷物をあさっていく。私は二回に分けて持っていたすべてのお菓子を取られた。

まぁ私が盗られたのはお菓子ぐらいだからいいんだけど、ちゃんと叱った方がいいんじゃない?今が叱るチャンスだよ?
と親に話したところ、
「こういうことは実はよく起こるんだ。僕らが棚の上に隠しておいたチョコレートがなくなったりね。でも僕たちはトマス・ゴードンの本を参考に、叱らずに子育てすることを理想にしていて、子供たちの自発性を促すように・・・」
うんぬんかんぬん。
まぁ、子育て方針は私が口出しすることではないし、親がそれでいいならいいけど。と、しておいたら、案の定というか、別のボランティアの人がお金を盗られた。

教育論って役に立たないなぁ!と身に沁みた一件だ。若干腹も立った。何かを育てるときと生き物の心に寄り添うときに、本当に役に立つ「理論」には出会ったことがない。頭に頼りすぎだ。

不幸が連鎖しているようなこの農場。毎朝頭を抱えている農場主。奥さんも娘もよくきついことを言われて泣いてしまう。
滞在中は一緒に問題を解決できればいいなと思ったけれど、出口が見えない上、さらに問題を自分から抱え込みに行っているように見えてもどかしかった。この農場の家族が方針なりなんなり、考える時間にでもなればいいと思って、できる限り仕事はしたけど、私も一旅行者で、いつまでもはいられない。
私が出ていくときには農場主は泣いていて、「いつでも戻ってきていいからな」と何度も言ってくれたけれど、そりゃ、まぁ、自分でいうのもなんだけど、こんな優秀なボランティアなかなかいないよ。労働力は旅行者、ボランティア頼みだったので、離れる時には小さな罪悪感があった。

農場の方針、語ってくれることはいつも正しかった。
世の中に数ある問題、それこそ、地球温暖化からヨーロッパとアフリカの関係問題に、流通、雇用、格差まで、様々な問題を少しでも何とかしようと、必死で向き合っている農場だった。良し悪しは語れない。その姿勢は尊敬するばかりだ。しかし、現状はかなりしんどい。

自給自足について、タイやネパールでなら、簡単にできていたことが、ドイツでやろうとするとものすごく大変だった。気候の違いもあるし、社会の構造の違いもある。いろいろ要因はあるにせよ、同じ「生活すること」で、ここまで差があると考えざるを得ない。

日本で農業関係者にこの話をすると、鬼の首でも取ったように「それみたことか!自然栽培だのエコな生き方だのただの理想だ!やめとけやめとけ!」と言われるのが、これまた腹が立つ。
が、数字の出ている今までの方法が無難なのはよく理解できるし、その無難なやり方も今までの誰かの努力あってこそなのも承知なので、何に腹が立っているかよくわからなくて怒りの行き場がない。とにかく、やってもないのに否定するなよとだけは思う。今ある世の中の問題の大半はその「努力」もしくは「欲」の歪みでもあるんだし。

ドイツで世の中の問題について議論している間、ミャンマーで僧侶に言われた、
「人間活動はすべて無意味だ。瞑想しているのが一番役に立つ。」
という言葉がリフレインしてやまなかった。なんてこった。

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